生前対策コンサルティング事例(第1回) 子どもがいない夫婦の場合

2025年09月05日

生前対策は「自分にはまだ早い」「特別な資産家だけの話」と思われがちです。しかし、実際には家庭の事情によって必要性は大きく変わります。本シリーズでは、司法書士・行政書士がペルソナ(サービスや商品を利用する典型的なユーザー像を、架空の人物として具体的に設定したものです。 )を設定し、それぞれの状況に合った生前対策を解説します。第1回は「子どもがいない夫婦」。一見シンプルに見える家庭事情ですが、実は相続の場面では大きなトラブルにつながる可能性があります。

目次

1.子どもがいない夫婦に起こりがちな相続トラブル

2.ケース紹介:高松市在住・Aさん夫妻の場合

3.想定される課題とリスク

4.専門家が提案する生前対策

 (1) 遺言書の作成

 (2) 家族信託の活用

 (3) 任意後見制度の検討

5.各対策のメリット・デメリット

6.ケースへの具体的提案まとめ

7.生前対策の第一歩を踏み出すために

8.まとめ


1. 子どもがいない夫婦に起こりがちな相続トラブル

「子どもがいないから、相続は簡単」と考える方は少なくありません。しかし、実際の民法上の相続順位を確認すると、配偶者のほかに 被相続人の父母、祖父母、兄弟姉妹 が法定相続人になります。つまり、夫が亡くなった場合、妻と義理の両親や兄弟姉妹が相続人となるのです。特に義理の兄弟姉妹とは普段の交流が薄いことが多く、相続分を巡ってトラブルが発生するリスクは高くなります。

2. ケース紹介:高松市在住・Aさん夫妻の場合

  • Aさん(夫・68歳)、妻(65歳)
  • 子どもなし、夫婦で自宅に暮らしている
  • 自宅は夫名義の一戸建て、その他に預貯金1,500万円程度
  • 夫婦は仲良く暮らしているが、夫の兄弟2人とは疎遠

このような状況で夫が亡くなると、妻が自宅で住み続けるためには相続登記をする必要があります。しかし遺言がない場合、夫の兄弟も法定相続人となり、遺産分割協議に参加しなければなりません。兄弟が協力的なら良いのですが、「財産の取り分がほしい」と主張すれば話はこじれ、最悪の場合は妻が自宅を売却せざるを得なくなるケースもあります。

3. 想定される課題とリスク

  1. 自宅不動産の共有化による居住不安
  2. 兄弟姉妹との交渉リスク
  3. 相続手続きの長期化による生活不安
  4. 妻の老後の生活資金が不安定になる可能性

つまり、子どもがいない夫婦では 「配偶者を守るための仕組みづくり」 が生前対策の最大のテーマになるのです。

4. 専門家が提案する生前対策

(1) 遺言書の作成

自筆証書遺言や公正証書遺言により「全財産を妻に相続させる」と明記しておけば、兄弟姉妹は遺留分を持たないため、遺言通りに妻が財産を取得できます。これはもっとも基本的かつ強力な対策です。

(2) 家族信託の活用

夫が元気なうちに、自宅や預金を「妻の生活を守るために信託」する仕組みを整えることも有効です。認知症などにより判断能力が低下した場合でも、信託契約に従って管理・処分が可能になります。

(3) 任意後見制度の検討

判断能力が衰えた場合に備えて、信頼できる妻を任意後見人に指定しておくことも安心です。これにより、介護や医療、財産管理をスムーズに行えます。

5. 各対策のメリット・デメリット

6. ケースへの具体的提案まとめ

Aさん夫妻の場合、まず 公正証書遺言を作成 し、妻にすべてを相続させる旨を明確にすることが最優先です。さらに、夫の健康状態や資産状況に応じて家族信託や任意後見を組み合わせることで、「自宅を守る」「老後資金を確保する」二重の安心を確保できます。

7. 生前対策の第一歩を踏み出すために

「子どもがいない夫婦」という状況は、相続トラブルを引き起こしやすい典型例です。大切なのは「まだ大丈夫」と思っているうちに、具体的な一歩を踏み出すこと。専門家と一緒に制度を比較検討し、夫婦に最適な形を選ぶことが、将来の安心につながります。

8. まとめ

  • 子どもがいない夫婦は兄弟姉妹が相続人になるリスクがある
  • 遺言書で配偶者を守ることが基本の対策
  • 家族信託や任意後見で老後・認知症リスクにも対応できる
  • 重要なのは「夫婦に合った仕組みを選ぶこと」

※相続は、お一人お一人の状況が異なるため同じものはありません。だからこそ、ご自身の状況を専門家に相談することで、その時に最適な対策をすることが可能です。

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